3人が本棚に入れています
本棚に追加
庭に、ビニールの大きなプールが置かれていた。
毎日のように2歳の子供が水浴びをしている。
その横でその女の子の母親が、幸せそうに見守っていた。
美也子が買い物から帰ってきた。
「聡子さん、」
「あ、お義母さん、お帰りなさい」
「いいもの買ってきたのよ」
美也子は嬉しそうに鞄から手持ち花火を出して見せた。
聡子はニコニコしていた。
「わぁ、花火」
「今日の夜、しましょう」
その夜、父親と母親、美也子と啓太の三人家族…は、庭先で花火をした。
ジジジという音と共に火薬の匂いが立ち込め、煙が少し目にしみる。
やがてそれはパチパチという音に変わり、耳に心地よい。
火花が、綺麗だ。
一瞬のその映像はどんな形にも残せない。記憶に焼き付けるだけだ。
だが、静寂の蝉の目には何も映らない。
ただ、美也子の幸せそうな笑い声だけが響く。
最初のコメントを投稿しよう!