働きなさい

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「一体君はどういうつもりで人間を助けたんだね。独断と偏見でこういうことをやられちゃ困るんだ。われら5柱の神は一心同体なんだ。1柱の神が暴走して何になるというんだ」 「すいません」 「人間の行いは昔から目に有り余っていたんだ。人間の存在はいずれ世界の滅亡につながる。そのときはどうせ奴らも死ぬんだ、情なんてかけてやる必要はない」 「はい」  私は今、口ひげをはやした中年白人男性の姿をした神に永遠と怒られています。 「反省文を書き給え。明日までに私に提出だ」 「かしこまりました」  安藤未華子を思い出しました。彼女は確か上から目線で何かを言うのはおこがましいと言っていました。  ふむ。 「あの、人間がいなくなるとどうなると思いますか」 「はあ?世界が平和になるに決まってるだろう」 「決めつけはよくないと思いますよ」 「何?」  おじさん神の青い目にはわけわからないという色が浮かんでいます。  誤解しないでほしいのですが若い人間の姿をしている私とおじさん神の身分は対等です。 「あなただって人間の恩恵を十分なほどもらっているではありませんか。例えば言葉。これは人間が生み出したものであり、我らは人間の姿をして声帯を持たなければ扱うことができません。言葉によって神たちの意思疎通も昔より楽になりました。ほかの動物をまねてコミュニケーションをとろうとしても、細かい話し合いはできません。あなたのその態度だって基本的には人間をまねたものでしょう。人間がいなくなったらいずれ我らも衰退しますよ?」  おじさん神は顔を真っ赤にして口をパクパクさせました。実に見事な怒り様です。 「人間そっくりですよ。おじさん」 「ぐ、ぐう」  一礼をしてその場を去ろうとした私に彼はやっとこさ言葉をかけました。 「は、早く働きなさい。古澤ミカコ」  あまりのことに吹き出してしまったのは、言うまででもないでしょう。
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