第一章《運命》

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時はその動きを止める。 歩いていた人も、飛んでいる鳥達も 水の流れも、風さえもその動きを止める。 そして、私の回想と共に逆方向に向かって進み出す。 最初はゆっくりとそして、徐々に速度を上げる。 夜から昼へ夜から昼へ、 雪が積り、見事な紅葉が咲き、蝉の声が聞こえ、桜が満開となる。 不思議な光景だ。 四季とは春夏秋冬が不変の決まりだ。 しかし、今は冬秋夏春の順で巡る。 そして、何度目かのその不思議な光景を傍観した時、その動きは徐々に速度を落としていった。 何故こうなったか、 私はあの時、運命を知った時、 もうこの世の理から外れてしまった。 残ったのは怨みという呪いだけ。 それ以外は何も残っていない。 ならばせめて、理から外れたのなら。 もう一度私の人生を省みても良いのではないかと思った。 勿論やり直せるわけもない。 そうこれは単なる暇潰し。 時間が来るまでのただの戯れだ。 それに、私は覚えていない。 いや、知らない。 私の呪った他の集落の結末を 「そうね。戯れだもの。見たいわ。 醜い者達がどう滅んでいく様をこれは余興。 あの子達が来るまでの余興。」 ・・・あの子達。 それは勿論私の子孫である。 夢で会った。 「ふふっ。私の器は見事にそっくりだったわ。 それにあの子も。博史にそっくり。 早く来ないかしら。 それまでこの余興を楽しまないとね。」 どこから見ようかしら。 でも、滅ぶ所だけみてもつまらない。 どうせなら初めから見よう。 時間はまだたっぷりとあるんだもの。 そうして、私は目を閉じる。
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