狭間の世界

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 深い闇 深海を漂うように浮遊する体。    ・・・ここは・・・ 螺旋状(ラセンジョウ)に渦巻く赤と黒のしま模様。   ・・・何故か心地よい・・・ 闇の中に蠢(うごめ)く無数の視線。 それを避けようとして自分の体がないのに気付く。 意識だけ漂うように闇夜に浮かぶ。    ・・・いったい俺は・・・ 蒼い光が上空から差し込んだ。 蒼い月 意識だけがその月に吸い込まれるように浮上する。 その時心に何かが囁く。 心の蔵から響いてくる警告音。    ・・・だめだ行くな・・・ まばゆい閃光と共に、 意識は再び遠のいた。 塩の匂いが鼻腔(びこう)をくすぐる。 再び意識が浮上し始める。 波の音が聞こえてきた。 全身に駆け巡る悪寒。 やけに寒い。 うっすらとまぶたを開けると、そこは砂浜だった。 寄せては返す波に足下を撫でられている。 ふと上空を見上げるとそこには蒼い月が、自分を見下ろしていた。
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