狭間の世界

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   ・・・ここは・・・ 蒼然(そうぜん)たる眼界景色。 創世記を思わせる情景。 風も無く凪いだ浜を、まるで全てを凍て付かせたように青い月の光が照らし出している。 夢と言うには余りに鮮明で、 現実と言うには余りに神々しく、 広がる世界にしばし我を忘れ見入ってしまう。 無意識に付いた手が、積雪を踏んだような乾いた音をたてた。 浜の砂は白夜に照らされ、怪しいまでの冷たさで、青白い光沢を放つ。    ・・・夢じゃないよな・・・ 磯(いそ)の香りにふと思い出したように身震いする体。 冷えた人体がリアルに五感を刺激する。 やれやれ夢じゃないとして、現実とも思えないこの状況。    ・・・さてどうするか・・・ 取りあえず起き上がった俺は記憶を確認するように自分の名前を呟いた。 「彼方」 蒼夜 彼方(そうや かなた)男。  "ふっ" つぶやいてから嗤笑(ししょう)がこぼれる。 誰か見ていたら狂ったように見えたかも知れない。 そんな自分を客観的に見たら、余りに滑稽(こっけい)で笑ってしまったのだ。 それで冷静さが戻ったのか、改めて辺りを観察する。 どうも日本じゃないな。 浜が人工的に作られた物とは明らかに違う。 砂浜を区切る防波堤がない。 どこまでも続く砂浜。 時折よしては返す波が、冷えた潮風を運び哀感を刺激した。
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