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それを歓迎するように原生林が口を開け、その体内へ手招きしていた。
原始の森は、樹木に天を覆い隠され、建ち並ぶ木々達を深い闇の底に沈めている。
その表層だけが月下のもと、異質な巨木の塔を浮き彫りにし、その陰影(いんえい)を慄然と刻んでいた。
極限まで肥大した木々を見上げ嘆息をつく。
そのまま闇の中へ歩を進めた。
奈落の底を思わせる闇は静寂と湿気た外気をはらみ、ぬめった質感で体にまとわりついてくる。
双月の恵みはこの奈落の森には届かないようだ。
それでも入口付近はまだましだろう。
その先に続く無の空間に足を踏み込む気勢がそがれかけた時、銃声が鳴り響いた。
いや銃声に似た何かが。
続けて２発。
続け様に響く薬弾（やくだん）の遠吠え。
森で銃声となれば猟師の可能性が高いだろう。
銃声にしか聞こえないその音を頼りに駆け出す。
ここが異世界だと言う認識を改めなければいけないかも知れない。
かつて世界は丸いと言った偉人がいた。
それと同じように、本当は月は二つあり、それが普通なのかも知れない。
銃声という科学の産声は、異世界には似つかわしくないだろう。
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