コーヒーと夕陽

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「あーあ、夏なんてなくなればいいのになぁ」 ベンチに腰を掛け、熱い缶コーヒーを片手に揺らしながら友人がぼそりと愚痴た。 ふと湧いた素朴な疑問を、 「なんで?お前暑いの苦手だっけ?」 「いや?」 即答で終わらされた。 だがどうでもいい新たな疑問ができる。 だが、これには投げ掛ける前に、 「死体の処理がなぁ」 溢すように言った友人のあっけらかんとした、まさに「今日の昼飯微妙だったなぁ」みたいな答え方にぎょっとした。 「あんまり外で言うなよ」 眉根を寄せて咎め、炭酸飲料に口をつける。 「ああ、すまん」 悪びれもせず謝り、友人はコーヒーを一口飲んだ。 「でも思うわけよ。なにもこんな季節にって」 「それが仕事だろ」 少し強めに咎めると、 「まぁ、なぁ」 友人は口篭る。 が、またすぐに話始めた。 お喋り好きめ。 「郵便局の先に公園あるだろ?」 ふと、それがあるのだろう方へ顔を向ける。 「あそこの池、夏の終わりになると夕陽がすごく綺麗なんだよ」 「ん?あぁ、そうなんだ?」 友人はコーヒーの缶を揺らしながら、少し笑った。 「あれを見てから死んでも遅くないと思うんだよ」 ああ、なるほどな。
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