0人が本棚に入れています
本棚に追加
/173ページ
とある日、一人部室で向かう最中、部室近くの壁から隠し切れない見覚えのあるような巨体がはみ出ていた。
「何してんだよ東口氏」
「アレー、達紀氏ジャナイカ、コンナトコロデキグウデスナ」
前にも言ったがこの階には学級は存在しておらず、部活動でもなければこの階に用がある生徒はほぼ皆無なのである。しかもわざとらし過ぎる台詞に片言、白々しいにも程があった。
「おまえウチの部、出禁だぞ」
「だから達紀氏が来るのを待っていたのではないか」
「は、はあ」
「我もあれから反省し、今度こそ恋愛というものをしたのだ」
初めから話半分にしか聞いていなかったが、もう東口の口から『恋愛』という言葉で更に胡散臭さが増すように思える。話を聞く気は無かったが東口は自分からどんどん話してスマホを見せた。
「見てくれ、達紀氏!この子が今我が好意を寄せているレナちゃんだ。可愛く思わんか?この子を攻略するために部には内密に力を貸してほしいのだ」
案の定スマホに映っていたのは二次元のキャラクターであった。それを見た瞬間、言い過ぎたかと思っていた時間がどれほど無駄だったのかと後悔すると同時に溜息を吐く。面倒なので出禁である東口を避けて部室に入っていく。閉ざされたドアからは叩き自分を呼ぶ声がするが気のせいということにした。
きっと東口は死んでリセットでもされなければ二次元の世界からは抜け出せないのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!