3章 頼れる先輩と悪戯な仕掛け人

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1話 入野愛の息抜き  いつも変わり映えのない部室にもちろん恋愛の相談に来ている生徒は今日もいない。しかし変な厄介者が来るぐらいならこのダラダラできる空間も悪くはない。  五人が話したり、ゆっくりしていると部室のドアが開く。五人共相談者ではないかと少し期待して見るがリクルートスーツを着た春日先生だった。 「なーんだ春ちゃん先生か」 いじけるように結衣は元の姿勢に戻す。 「なんだとは何よ、先生に失礼なんじゃない?」 先生は相談者席のイスに座り、合わさった机の中心に置かれたお菓子に手を伸ばす。 「春ちゃん先生久しぶりですね」 「まあね、たまには顧問だから見に来ないと。あなた達も部活動は捗ってるの?」 明乃が相談に来てから東口がろくでもない恋?の悩みを相談に来たぐらいである。他の四人も思い出してもろくでもない記憶しかないので険しい顔になる。 その顔を察したのか春日先生はそれ以上深く聞こうとはしなかった。 「まあ入野さんがいた頃だって最初は上手くいかなかったんだからコツコツがんばっていきなさい」 春日先生は最後の一口分のお菓子をつまみ、立ち上がり退散しようとする。ドアを開けると一人の女子生徒が立っていた。どんな人なのか気になるが春日先生にかぶってよく見えないが150cmちょっとの小柄な先生よりは背が高いようには見える。 「あら、入野さんじゃない。久しぶりね」 「春ちゃん先生久しぶりです、またつまみ食いですか?太りますよ」 廊下に立っていた女子生徒はすぐに先生が片手につまんだお菓子に気付きいじってみせる。先生は「たまにだから」と言い訳を必死に連呼していた。 「それじゃあ入野さんも勉強がんばってね」 「ハーイ、がんばります!」 春日先生は帰ってかわりにその女子生徒が部室に入ってきた。片桐さんは軽くお辞儀し結衣とモモは嬉しそうに小振りに手を振っていた。
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