1 小道の再会

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その男は、歩く私からは随分と前方で立ち止った。 だから、私の耳がそれを捉えたわけではない。 だが、立ち止まる寸前に彼が「あっ……」と小さく呟く姿を、 確かに、私の目が正面から見ていた。 辺りは、まだ春の残り香が色濃い季節。 自然が織り成す彩りは、淡い、ほんのりとしたものから、 わずかに原色の匂いを開花させようと背伸びをしている。 そんな景色の中に、シルバーグレーのジャケットと黒のパンツ。 そして足元は、パンツと同じく黒いバイクブーツ。 ファスナーを開けたジャケットから真っ白いTシャツをのぞかせた彼は、 両手をパンツのポケットに入れて、立っていた。
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