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だが、やっぱり大人気ないことは言えず、白けた溜息を飲み下す。
「うん、人間はね。でも、猫なら一匹いるわよ」
出来るだけ、さり気ない口調で言ったつもりだった。
だが恐らく、どこか奇妙に歪んだ笑顔になっていたと思う。
しかし今度は彼が、その私の心の内を黙殺した。
「ふぅーん」
どこかつまならそうに言った彼は、クルリと背を向け上がり框に座ると、
ブーツのチャックを下ろし始める。
なんとなく私たちの間に、私が心底うんざりしている下手な駆け引きが
生まれそうな気配が浮かんだ。
それと同時に、私の気持ちも俯きだす。
だが、そんな私を余所にブーツを脱ぎ終えた彼は、
興味深げに、玄関の目の前に続く廊下から階段へと視線を投げ、
廊下と階段に挟まれた扉に目を止めた。
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