二股

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それから、車の中はずっと無言だった 真顔で運転する中田君を時々見上げるけど 私は何もいえなかった 苦しそうな そんな表情の彼に何が言えるだろう さっきの状況を思い浮かべる 『ごめんなさい。私 やっぱり中田君と・・・』 そこまで聞いていた中田君は・・・ きっと、その先の言葉を分かっていたはずだ 私が『付き合えない』 そう言うことを・・・ それでも、こうやって 私を連れ出してくれた 諦めないと言ってくれた その想いの強さに 目頭が熱くなる これは・・・なんの涙? 嬉しい涙? 好きになれなくてごめんなさい・・・ていう涙? もう・・・・わからない・・・・・ 私はギュッと膝の上で拳をつくった ちゃんと・・・・ はっきりさせなくちゃ 私ごときが 彼の想いを無駄にさせてはいけない きっと、中田君はすぐに素敵な恋人を作ることができる 私は・・・・また一人の生活になるけど・・・・ それでも、人を好きになることを知ることができた 一生独身でも・・・ 孤独死が待っていても 私は、この自分の気持ちを大事にしたい 人には諦めろと言っておいて 自分は諦めないという 大きな矛盾に私は板ばさみになっていた
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