二股

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静かに車が停まる ・・・・? 家に着いたのかと顔を上げると そこは私のアパートから徒歩5分くらいの距離だった 小さく私の部屋の窓が見える まだ・・・先輩は来ていない こんな時でも先輩のことを考える私は最低だ 「佐藤・・・」 切ない声が車内に響く 「は・・い?」 擦れた私の声には緊張が見てとれた 「俺、やっぱり 佐藤が好きだ。佐藤が他の人を好きでも」 何もいえない私は俯くことしかできない 「でも・・・そろそろ迷惑だよね。」 「迷惑だなんて!!」 私が顔を上げると そこには、見たこともない切ない目をした中田君が私を優しく見下ろしていた なんで・・・・ こんなに素敵な人を好きになれないの・・・・・? 叶わない恋の方に私は突き進んでいこうとしているの・・・・? 自分で自分に問いかける でも、答えはでない きっと、それは中田君も同じだろう ポツリと 「両思いなんでしょ?」 そう言って、顔を歪めた彼は きっとその顔を見せたくなかったのか 私を抱き寄せた 不安定な格好で抱き寄せられた私はバランスを崩して 全体重を中田君にあずける形になった 「中田・・くん」 違います そう言いたいけど 言ったところで 私は中田君を好きになれるわけじゃない
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