一章 不機嫌な年下

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「おはよー」 「……。」 近所のバス停でバスを待つタイチの後ろに並んだモリヤはいつも不機嫌な表情をする。 「ね、モリヤは昨日何してた?」 昨日は日曜日、同じマンションに住んでいるとはいえ 偶然なんて滅多にはない。 「…家に居た」 「そっか、ゲーム?」 「…まぁね」 ニコニコとして見下ろす割にはモリヤの表情が変わる事はない。 「今日帰りにゲーセン行かない?」 「行かない」 何の迷いもなく答えたモリヤの返事に眉を下げた… 「そっか、じゃ…また今度ね」 いつもの事だった。 暫く続いた沈黙から救い出すように何時もより早くバスが着く。 前から乗り込み定期を差し出し、混み合った車内の手摺に捕まれば、離れれば良いのにも関わらずモリヤはタイチの隣に並んだ… 嫌われているのか…そうではないのか…。 タイチの唇が一瞬尖って、その後 バスによるブレーキによって揺れたモリヤの体がタイチにぶつかり少し緩んでしまった… 「捕まって良いよ…?」 小さな声で呟き、モリヤに向けて肩に掛けた鞄の角を差し出した。 「……。」 するとより一層不機嫌な表情をさせたモリヤが背筋を伸ばして空いていない手摺の上のポールを掴んだ… 更にがっかりするタイチだったが、 モリヤの黒髪から覗く頸が真っ赤になっている事に気付いて笑い出してしまうのを噛み殺した。
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