一章 不機嫌な年下

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モリヤとは長い付き合いだった。 昔は可愛い顔をしていて、今よりもずっと笑顔を向けてくれた… 「イチニイ!遊んで!」 思い出すのは、玄関を迷いなく開けて飛び込んでくるモリヤの姿だった。 人懐こく、迷いなく、汚れも無い少年はいつの間にか笑わなくなった。 「昔は可愛かったのに…」 そう呟くと、隣から空いていた方のひじが脇腹を攻撃してきた。 「独り言を喋るな。」 大きな黒目がタイチを見上げ、ギラリと睨む。 「はぁ…ぃ」 仕方ないな…とタイチは呆れた顔をする… モリヤが冷たくなった理由には思い当たる事があった。 中学二年の時、 それなりな年頃だった事もあって彼女が出来た。 好きだったかと聞かれれば、返事に困るが 別に断る理由も無かったし、 周りも意外と進んでいたもんだからそれとなしに付き合っていた。 タイチはモテる方だった… 緩めの癖毛に薄めの髪色、お婆さん譲りの白い肌と高い鼻に淡いブラウンの瞳… いわゆるクオーターってやつ。 別に彼女達もタイチの中身が好きだったのかさえ ハッキリしない… けれど、そんな物だ。 タイチからすれば、誰でも良かったのだ。
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