十二章 闘技大会

6/57
前へ
/686ページ
次へ
「他には?」 「少しやることが出来ましたので、明日、明後日は欠席しますね。失礼します。」 片手でドアを拾い上げ、もとの通りに嵌めてから立ち去った。 「………凄まじい脚力ですね。ドアが彼の足裏と同じ形にへこんでました。………ということは、ノックした後蹴破ったということになるんですが、よくドアに潰されずにすみましたね、私。」 そこには、戦慄する校長が残された。 数分後、寮、エトの自室。 「さて………島国の本気と狂気を思いしれ。」ゴトゴト、カチャカチャ ボックスから大量のインゴットと銀色の液体が入ったビーカーとフラスコを取り出しながら笑みを浮かべる男が居た。 「まずはこのインゴットを加工して………」 笑みを浮かべたまま、作業を始める。 「ここにこれを刻んで………中にアダマンチウムとヴィブラニウムの合金を充填………後は同じものをもう三つ………。」 丁寧に作業を進めるエト。 一時間後、作業机の上には腕輪が4つ並んでいた。 「よし………。」 両腕に二つずつ腕輪を着けて、満足げに頷く。 「次はアンクレットだな。これにはこの前見つけた風の魔結晶と火の魔結晶を組み込んで………」ブツブツ 食事も摂らず黙々と作業を続けるエト。 「こことこっちの式が繋がって………ああ、違う。これだと効率が悪い。………ここの式を変えて、こっちに繋いで………。………よし、最高。正直完璧って言いたいところだけど、いざ実際に動かして欠陥が見つかったら笑えない。」 完成した銀色のアンクレットを身に付け、同じように嗤う。 「お父さん。」 「お、ユイ。帰ってたか。」 「何してたの?」 「闘技大会の下準備。色々と縛りを掛けられたから、ちょーっと島国の本気を見せてやろうと思ってね。」 「そう………勝てる、よね?」 「………勿論。私は、既に強い。」 一度、作業の手を止めて席をたつ。 「良いの?」 「一旦休憩。結構根詰めてたからね。」 「そうなんだ………。」 ピンポーン 「誰?」 「師匠。」 「お、ラルフ。何か用?」 「何か用って、師匠。僕も生徒会チームで参加するんじゃなかったっけ。」 「ああ、その事なら何一つ問題はないよ。疲労も魔力も、私が完璧に回復させるから。」 「………リスクは?」 「相応にあるけど死にはしない。」 「そう。………ところで師匠、その腕輪とアンクレットは何?」 「秘密兵器。乞うご期待ってね。」
/686ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加