105人が本棚に入れています
本棚に追加
「………今日は厄日かしら。」
全身から血を流す男を見ながらアレクシアは毒づく。
「私としたことが、名乗っていませんでしたね?ヒヒヒ………私は魔国軍密偵部隊、副隊長。異名は不滅。名をシャドーと申します。」
「不滅………?不死種の魔物かしら。」
「ゾンビ扱いとは心外ですね?あんな腐乱死体どもと一緒にしないでいただきたい。ヒヒヒ………私は魔人ですよ。元はとくに取り立てて特徴のある魔人ではありませんでしたが。血の滲むような苦労をして、己を不死の超人へと作り替えることに成功したのですよ。」
「寝言は寝て言いなさいな。」
「………何ですと?」
「不死なんて、あり得ないのよ。今までそれが来たことが無いだけで、限界は必ずある。………そんなことどうでも良いから道を空けてくれないかしら?早くあの偽物野郎をとっちめなきゃいけないのよ。」
「そうは問屋が卸しませんよ、小娘。私は隊長に貴女を足止めしろと命じられております。行かせないと言ったら決して行かせません。」
「だったら………押し通るわ。」ズドォン
アレクシアが言い切った直後、男が背後の樹に叩き付けられる。男が元居たところに、両腕を前に突き出したアレクシアが立っていた。
「げふっ………容赦ないですねぇ?………ですが、無駄です。………む?おや………時間のようです。無いと思いますが、機会があればまたいつか。」
灰色の煙に包まれて、男が姿を消した。
「待ちなさい!………一応、狙った獲物を仕損じたこと無いんだけどなー………。腕落ちてるのかな………。なんにせよ、あの髑髏みたいな顔の貧弱男………今度会ったら八つ裂きにしてやるんだから!」
逃げられたことに歯噛みするアレクシア。
「………あ!いっけない………ユイちゃんが危ない!」
全く心配されていない主人公であった。
数分後、特待生寮108階。
「ユイちゃん!」ドォン
「危ないだろ、姉さん!」ガァン
「あれ、ラル?何でここに?」
「………今度は本物だよな。」フンフン
「む、お姉ちゃんを疑うか?」ミシミシ
「あ、うん、この力強い抱擁は本物だ。」
「よろしい。」
「あ………姉さん、後ろ………。」
「うん?」
「さて………言い訳を一応聞こうか?」ゴゴゴゴゴ
鬼神が、そこに居た。
最初のコメントを投稿しよう!