十二章 闘技大会

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「………今日は厄日かしら。」 全身から血を流す男を見ながらアレクシアは毒づく。 「私としたことが、名乗っていませんでしたね?ヒヒヒ………私は魔国軍密偵部隊、副隊長。異名は不滅。名をシャドーと申します。」 「不滅………?不死種の魔物かしら。」 「ゾンビ扱いとは心外ですね?あんな腐乱死体どもと一緒にしないでいただきたい。ヒヒヒ………私は魔人ですよ。元はとくに取り立てて特徴のある魔人ではありませんでしたが。血の滲むような苦労をして、己を不死の超人へと作り替えることに成功したのですよ。」 「寝言は寝て言いなさいな。」 「………何ですと?」 「不死なんて、あり得ないのよ。今までそれが来たことが無いだけで、限界は必ずある。………そんなことどうでも良いから道を空けてくれないかしら?早くあの偽物野郎をとっちめなきゃいけないのよ。」 「そうは問屋が卸しませんよ、小娘。私は隊長に貴女を足止めしろと命じられております。行かせないと言ったら決して行かせません。」 「だったら………押し通るわ。」ズドォン アレクシアが言い切った直後、男が背後の樹に叩き付けられる。男が元居たところに、両腕を前に突き出したアレクシアが立っていた。 「げふっ………容赦ないですねぇ?………ですが、無駄です。………む?おや………時間のようです。無いと思いますが、機会があればまたいつか。」 灰色の煙に包まれて、男が姿を消した。 「待ちなさい!………一応、狙った獲物を仕損じたこと無いんだけどなー………。腕落ちてるのかな………。なんにせよ、あの髑髏みたいな顔の貧弱男………今度会ったら八つ裂きにしてやるんだから!」 逃げられたことに歯噛みするアレクシア。 「………あ!いっけない………ユイちゃんが危ない!」 全く心配されていない主人公であった。 数分後、特待生寮108階。 「ユイちゃん!」ドォン 「危ないだろ、姉さん!」ガァン 「あれ、ラル?何でここに?」 「………今度は本物だよな。」フンフン 「む、お姉ちゃんを疑うか?」ミシミシ 「あ、うん、この力強い抱擁は本物だ。」 「よろしい。」 「あ………姉さん、後ろ………。」 「うん?」 「さて………言い訳を一応聞こうか?」ゴゴゴゴゴ 鬼神が、そこに居た。
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