第一章 気がつくとそこは…

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「ですから言葉で話してくださいと…。まあいいです。なぜ貴方がここにいるか、を話したいのですが?」 そういえば、なぜ私はここにいる?死後の世界など存在しないと思っていたのだが…。 「理由は二つ、まあ実質一つですがありまして。一つ目が、貴方が本日十万人目の死者であると言うこと。二つ目が、言ってしまえば私の気まぐれです。」 気まぐれ? 「ええ、気まぐれです。そろそろなにか喋ってもらえませんか?」 なにかと言われても…。 「プライバシーを踏み荒らしているも同然の真似はあまり好きじゃあないんです…。」 「それで、これから私はどうなるんだ?」 「あ、やっと喋ってくれましたね。というか、敬語使わないんですね。敬えよとかは思わないから別に構いませんが…。」 「敬うべきだと思えば敬語くらい使う。今この現状は間違いなく現実らしいことは理解しているが、翼が生えているどこからともなく現れた人間のような見た目のなにかを敬えと言う方が無理がある。」 「確かにそれもそうですけど…!」 「そろそろ教えてもらえないか?私はどうなるんだ?」 「そのことなんですけど…」 「?」 「異世界、行ってみませんか?」 「異世界?」 「はい。」 「詳しく説明してもらえないか?」 「かなり簡単に言ってしまえば、ドラゴンを筆頭に空想の産物が闊歩する剣と魔法の世界に行ってみませんか?という話です。」 「なるほど。面白そうだ、が。元の世界の身体能力のままその異世界?とやらに行こうものなら直ぐに死んでしまうだろう?」 「多少能力などはつけてあげますよ?世界最強にしてくれ、とかは駄目ですが。」 「なにを当たり前のことを。百歩譲って君が神だとしても無い袖は振れないだろう?最強なんてものは存在しないのだから。仮に最強が存在するとすればそれは自然そのものだ。それに君の過失で死んだわけでもないのに世界最強はサービスのしすぎというものでは?」 「意外ですね。人間とは欲の深い生き物だと思っていました。」 「人間の言葉で、こう言うものがある。過ぎたるは猶及ばざるが如し。身の丈に合う程度で十分だ。」
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