十二章 闘技大会

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「本当、結構重いから退いてくれると嬉しい、な!」 「足癖悪くなった?≪ブラストランチャー≫!」 ミカエルが蹴りを繰り出すと同時にグレイが大剣から手を放す。柄頭が爆発し、刀ごとミカエルを後ろ向きに大きく吹き飛ばす。 「………小賢しくなったじゃない、グレイ。でも、武器手放しちゃ駄目でしょ?剣撃………閃光!」 「はっ………誰も手放しちゃいねーよ。」 柄頭から伸びた鎖を掴んで振り回す。 凄まじい速さの斬撃を、大剣で撃ち落とす。 「やるね!ちょっと本気出しちゃおうかな?」 「………やってみるか、父上直伝………≪轟炎魔装・炎王獣降臨≫!」 グレイの姿が大きく変わる。 癖の強いネコっ毛の赤髪が一気に増量して鬣のようになり、ライオンのような仮面が顔の上半分を覆う。 右腕は魔武器の大剣と融合してブレード状になり、左手からは鋭い爪が生える。 腰の辺りから尻尾のようなものが生えて、変貌が止まる。 「こんなんなるのか。………負ける気がしねぇ!」 「………怖いなぁ。じゃ、僕も。≪閃光魔装・無影乃剣聖≫。」 此方はさほど肉体の大きな変化はなく、せいぜい服装が制服から白い着物に変わった程度である。 「んじゃ………小手調べは終いだ。行くぞ………アークライト!」 「良いよ………おいで、グレイ!」 ブレード状に変化した右腕で斬りかかったグレイ。 それをかわし、ただ横を通り抜けるミカエル。 「どうした、なんで攻撃しない?」 「したけど?………あれ、おかしいな。………なんで琥珀の刃が、熔けて………熱っ………!」 「はあ?………ぐっ!」シュウウウウ 腹から煙を上げながらふらつくグレイ、魔武器を取り落とすミカエル。 「………すれ違い様に切りつけやがったか。」 「当たり。まさか魔武器を融かされるとは思ってなかったけど。その煙から察するに、君の体は今とてつもない高温を発しているね?」 「………そうだよ。お陰で、傷が勝手に焼けて血が止まるんだ、よ!」ゴォッ 口から不意討ち気味に火球を吐き出すグレイ。器用にミカエルが着物の袖で弾いた直後、腹部に爪が突き刺さる。瞬間、ミカエルの姿が消える。 「残像だよ。」カチャッ 「ああ、アークライトならそこに来ると思ってた。」 背後に立たれ、首に鋒を添えられてなお、グレイは平然としている。 「それ、どういう意味?………まさか!」 「遅い。≪大炎熱地獄≫!」 後方に跳ぶよりも速く、焔がミカエルの体を呑み込んだ。
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