十二章 闘技大会

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「………俺の倍は強くて、10倍強かなあんたのことだ。まだ生きてんだろ!」 「やってくれるね………強くなったじゃない、僕やクリスにぼこぼこにされては泣いてたあのクソガキが。」 「いつの話だ、それ。それに、兄上には別にぼこぼこにはされてねーよ。」 「でも………アタシを嘗めてもらっちゃ困るな!」 「は………?」ゴトッ 一人称が変わった直後、グレイの左腕が肩から切り落とされる。 「………まだ動けるのかよ。」 「嘗めんなっつったろ、ガキ。琥珀、形態変化。」 鞘と柄を連結させ、刀身を撫でる。直後、反りのあった鞘がまっすぐになり、刀身が融けて形を変える。 「槍なんか使えたのかよ、ミカ姉。」 「テメーの言うミカ姉なら今気絶してるよ。アタシはベリアル。こいつの意識がないときしか出てこられないこいつの裏だ。………にしてもテメー、随分勘が働くじゃないか。首を獲ったと思ったのに、蓋を開けりゃあ腕一本かよ。」 「本気のミカ姉よりは遅かったからな。」 「へー。言うじゃねーか?………ま、アタシが出てるときはなんでかこいつの持ってる光が使えねーからそれはしゃーねぇか?」 「確かに、魔装解けてるな。」 「だろ?アタシの属性は………(こっち)だ。」 全身から吹き出した黒い靄が、ベリアルと名乗る少女の体を覆う。 「≪暗闇魔装・宵闇舞踏≫。さぁ踊ろうぜ、小僧?」 「生憎ダンスは嫌いなんだよ………!」ガァン 振り下ろした右腕と、薙いだ十文字槍がぶつかる。 ドレスを纏い不敵な笑みを浮かべる少女と、仮面で表情を窺えない少年。 「なんでそんな機嫌悪そうな面してんだよ、小僧?」 「そのあからさまに下に見た呼び方が気に食わねえ!」ゴォーッ ゼロ距離で火炎放射を浴びせる少年。 「ひゃははは!良いねぇ、そう来なくちゃ!」 「あとミカ姉と同じ顔でその品のない笑い方をするのも気に食わねえ。」 「ひゃは!それがどうしたよ!」 「………潰す。炎王獣降臨、第二階層。≪蒼炎魔獣王降臨≫!」 仮面の目が猫科のそれから爬虫類のそれに変わり。腰から生えた尻尾は蠍のそれに。失ったはずの腕は焔によって補われ、全体的に色が蒼くなる。更に一対の腕が増え、増えた腕が元の腕から分離した魔武器を掴む。焔の腕を切り落とされた腕に向けると、落とされた腕が吸い込まれた。
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