十二章 闘技大会

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「我が輩は、もう用済みと言うことで良いな?」 「ああ、ありがと。≪精神開門(マインドゲート)≫、ここ通れば帰れる。」 「必要ならまた呼べ。手は貸してやる。」 「ああ。………禁術の解析なんか、初めてやる。………展開。術式投影。………転写開始。今回のはまだ楽な方か。………よし、術式解体開始。」 ピシッ 石に亀裂が走る。音をたてて徐々に拡がり、崩れていく。 やがて甲高い悲鳴と共に、赤黒く光る石は崩れて消えた。 「けっ………何だよ。何だよつまんねーな?あとちょっと、指先ほどの距離が届けば殺せたのによ?」 「彼がいる場所で禁術を使ったのが君の敗因。解るでしょ、「アタシ」。」 「気に食わねえ、なんでテメーが主人格なんだよ?「僕」。アタシの方がこの体を有効に使えるってのによ?」 「僕が僕になる前、まだ「私」だった頃に父が私に掛けた禁術、≪狂気の罪業遊戯(デンジャラスゲーム)≫。それが貴女が生まれた切っ掛けだから。私から切り離された悪意と憎悪、その他どす黒い感情の集合体。それが「アタシ」。怒りや憎しみ、それすら生ぬるいほどの殺意。それらと共に切り離された闇が貴女。僕は光の七大貴族の嫡子だ。闇を同時に持つことなんてあるはずがない………あってはならない。そう決めつけた父が、私に禁術を行使して僕と「アタシ」に心を切り分けた。………本当、余計なことをしてくれるよね?光と闇は表裏一体、切り離すことなんて、本来出来ないのに。」 「ちっ………褪めた。興醒めだわ、下らねー自分語りをぐだぐだと聞かせやがって。………出自なんざどーでも良いんだよ、アタシは。誰かの影でいなけりゃならないこの状況が気に食わねえ!」 「分かってるでしょ?僕に当たり散らしてもどうにもならない。」 「それでもアタシは………!」 「………はい、そこまで。あんまり長いこと潜ってると私もおかしくなるから、そろそろ術を解きたい。………それに、そろそろ下半身の感覚が無くなってきた。」 「………なんか腰から下が冷たいと思ってたけど、君のせい!?」 「そんなとこ。とりあえず応急処置として≪戒めの蕀鎖≫。これでミカエルの言うところの「アタシ」は暴れられない。」 棘だらけの鎖が、ベリアルと名乗る少女の体を縛る。
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