105人が本棚に入れています
本棚に追加
「何度も同じ事を言わせないでくれ。≪咆哮障壁≫。」
音の壁が爆炎を阻む。
「馬鹿の一つ覚えだと思ったか?」
背後に姿を現し上段に振りかぶるキャンベル。
「君こそ………私が前しか防御できないと何時言った?」
「くそ………がっ!?」シュウウウウ
上半身から煙を上げるキャンベル。わずかにふらつくが、すぐに立て直した。
「≪囀ずる背面盾≫。背後に回る敵への対策だ。………あっさり掛かるとは、さては激情型だな?」
「………ちょっと頭が冷えた。血の気が多いのは自覚してる。連爆炎虎……昇華。≪禁忌:砕光魔装・臨界白虎≫。身を焦がす灼熱の鎧、あらゆるものを焼き滅ぼす燼滅の牙………凌げるものなら凌いで見せろ!」
踏み締めた地面が音をたてて熔ける。纏う魔力の色が赤から白に変わり、眩い光を放つ。
「無茶な真似を………。その力は危険だ、制御できずに使えば身を滅ぼすぞ?」
「否定はしない。だが、短時間なら扱える。………行くぞ。」ヂッ
「………わからない後輩だ。」ジャーン
キャンベルが地を蹴ると同時に、アリシアが弦を掻き鳴らす。
「効くか!」
全身から煙を上げながら、それでもキャンベルは止まらない。
「爆魄斬・飛鳥!」
「………無駄だ≪楽隊の聖域≫。」
半球状の結界が、焔の鳥を受け止め掻き消す。
「………爆魄斬・釘蜂!」
無数の突きが結界を襲うが、皹一つ入らない。
「演奏中は静粛にしたまえ。」
さまざまな楽器を持った人形がアリシアの背後にずらりと並ぶ。
「さぁ、始めよう。」
何処かで聞いたことがある感じの曲を演奏し始める人形達。
「………何だ、この最終決戦と言わんばかりの曲は?」
「先程発動した結界の効果だよ。………あまりに運任せなのが珠に瑕だが。曲によって何が強化されるかは私にさえわからないし、相手にも同じ効果が現れることもある。今回は………」ゴッ
強烈な左のフリッカージャブが、キャンベルを客席の障壁に叩きつける。
「腕力強化のようだ。」
『なんとぉ!?』
『魔武器の能力に由来する結界魔法か、面白い。』
「その腕、火傷したろ?………今の僕の体には、打撃は無意味だ。」
最初のコメントを投稿しよう!