十二章 闘技大会

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「何度も同じ事を言わせないでくれ。≪咆哮障壁(ハウリングウォール)≫。」 音の壁が爆炎を阻む。 「馬鹿の一つ覚えだと思ったか?」 背後に姿を現し上段に振りかぶるキャンベル。 「君こそ………私が前しか防御できないと何時言った?」 「くそ………がっ!?」シュウウウウ 上半身から煙を上げるキャンベル。わずかにふらつくが、すぐに立て直した。 「≪囀ずる背面盾(ツイートバックシールド)≫。背後に回る敵への対策だ。………あっさり掛かるとは、さては激情型だな?」 「………ちょっと頭が冷えた。血の気が多いのは自覚してる。連爆炎虎……昇華。≪禁忌:砕光魔装・臨界白虎≫。身を焦がす灼熱の鎧、あらゆるものを焼き滅ぼす燼滅の牙………凌げるものなら凌いで見せろ!」 踏み締めた地面が音をたてて熔ける。纏う魔力の色が赤から白に変わり、眩い光を放つ。 「無茶な真似を………。その力は危険だ、制御できずに使えば身を滅ぼすぞ?」 「否定はしない。だが、短時間なら扱える。………行くぞ。」ヂッ 「………わからない後輩だ。」ジャーン キャンベルが地を蹴ると同時に、アリシアが弦を掻き鳴らす。 「効くか!」 全身から煙を上げながら、それでもキャンベルは止まらない。 「爆魄斬・飛鳥!」 「………無駄だ≪楽隊の聖域(オルケスタサンクチュアリ)≫。」 半球状の結界が、焔の鳥を受け止め掻き消す。 「………爆魄斬・釘蜂!」 無数の突きが結界を襲うが、皹一つ入らない。 「演奏中は静粛にしたまえ。」 さまざまな楽器を持った人形がアリシアの背後にずらりと並ぶ。 「さぁ、始めよう。」 何処かで聞いたことがある感じの曲を演奏し始める人形達。 「………何だ、この最終決戦と言わんばかりの曲は?」 「先程発動した結界の効果だよ。………あまりに運任せなのが珠に瑕だが。曲によって何が強化されるかは私にさえわからないし、相手にも同じ効果が現れることもある。今回は………」ゴッ 強烈な左のフリッカージャブが、キャンベルを客席の障壁に叩きつける。 「腕力強化のようだ。」 『なんとぉ!?』 『魔武器の能力に由来する結界魔法か、面白い。』 「その腕、火傷したろ?………今の僕の体には、打撃は無意味だ。」
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