堕ちた天使の子守唄

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プロローグ 「きょうは、転校生を紹介します。天草月渚さんです」  先生が言った。  先生のとなりに、ちょっと、はにかむような感じに、女のコがひとり立っている。考えるまでもなく、そのコが、転校生だろう。 「天草さんは、フランスに住んで、フランスの小学校に通っていました」  先生がそう言うと、はじめは、しんとしていた教室がどよめいた。とくに男子。あいつらは、こんなことを言う。 「かみのけ黒いじゃん」 「目も黒いじゃん」 「どこがフランス?」  ほんと、バカ。だって先生は、フランスに住んで、とは言ったけど、ひと言も、そのコがフランス人だと言ってはいない。まあ、そんなイチャモンをつけて騒ぎたい年ごろなのだ、男子にとっては。 《天草月渚》 と、先生は黒板に書いて、その横に、《あまくさ るな》と読み仮名をふった。……「月渚」って書いて「るな」って読むんだ……そう思った。
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