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先生の紹介が終わると、るな……月渚は、私のとなりの席にすわった。すわる前に、月渚は私を見て、ぺこっと、アタマをさげた。それで彼女の髪が、ふわっとゆれた。そのぐらい細くてやわらかな髪……そのころから変わることのない月渚の髪を、私は見た。色が白くて、目は黒いけど、ちょっと茶色く透きとおっているというか……
それ以来、私は、なんだかフシギな世界へと引きこまれていくこととなった。
何が、どうフシギなのか? それは自分でも、うまく説明できない。だけど、いま思うのは、それは、《記憶》のフシギ、ということかもしれない。《記憶》というのは、ただ私ひとりの記憶、ということではない。家族の記憶とか、町の記憶とか……ときには国の記憶とか、はたまた、地球の記憶とか……いろんなところに、いろんなスケールの《記憶》がひそんでいる。いまから私は、その記憶の扉を、ひとつずつ開けていこうと思う。月渚との出会いがもたらした、108の扉のむこうにひそむ《記憶》を覗いていくことにしよう。
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