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「それで、間に合いそうであるのか?」
芯のある、しっかりした声音だった。
「民の目覚めを待っているところでございます」
はじめの男の声が答えた。
「して、目覚めは?」
あとから問うた者の声が尋ねた。男の声が答えて言った。
「容易ではないようでございます」
「そうであろう。すでに幾度となく試みたこと。だが民の心を目覚めさすのは容易ではない」
「ただこの度ばかりは、目覚めなくば、もはや生命の存続は危ういかと存じます」
「なべては時の子。時とともに生まれ、時とともに滅びる」
自嘲とも皮肉ともつかない感じに女の声が言い、つづけて男の声が、こう言った。
「こうして生まれる星々が、やがては新たな生命を宿すこともございましょう。だがいまはまだ、あの星の生命の営みをながめていたいと、そのように思っておるのでございます」
声は哀しみの調子を帯びて、やがて漆黒の闇に吸われて消えた。
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