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「ありがとう、藤代」
「!」
今度は僕が目を丸くする。
散々言い負かされた後だというのに、この言葉は一体?
「お前の忠告は…無駄にしない」
「…」
どんなにからかった言い方をしようと、篠宮はその真意を見逃さない。
こういったところが、憎らしくも羨ましくもある。
「そうしてもらえると、甲斐があるってものかな」
「あぁ」
そうして、やっと篠宮の顔にも笑みが零れる。
少しふっきれたようなその顔を見て、元々心配していた訳ではなかったにも関わらず、何故だかホッとした。
そして、この教室に来た最初の目的を、不意に思い出す。
──篠宮は何故、生徒会室にいたのか。
僕にはもう、その答えがわかっていた。
篠宮に確認しようと思っていたけれど、その顔に免じて、言うのは止めにしておくよ。
『自分のテリトリーで過ごした彼女との時間があまりにも大切で、そして忘れられなくて、君はここにいたんでしょ?』
どんな時間を過ごしたのかはわからないし、それは僕らが知らなくていいことだから何も言わないけれど。
ただ、そう思っているのは、きっと君だけじゃない。
それだけは、確信できた。
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