scene.8

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「ありがとう、藤代」 「!」 今度は僕が目を丸くする。 散々言い負かされた後だというのに、この言葉は一体? 「お前の忠告は…無駄にしない」 「…」 どんなにからかった言い方をしようと、篠宮はその真意を見逃さない。 こういったところが、憎らしくも羨ましくもある。 「そうしてもらえると、甲斐があるってものかな」 「あぁ」 そうして、やっと篠宮の顔にも笑みが零れる。 少しふっきれたようなその顔を見て、元々心配していた訳ではなかったにも関わらず、何故だかホッとした。 そして、この教室に来た最初の目的を、不意に思い出す。 ──篠宮は何故、生徒会室にいたのか。 僕にはもう、その答えがわかっていた。 篠宮に確認しようと思っていたけれど、その顔に免じて、言うのは止めにしておくよ。 『自分のテリトリーで過ごした彼女との時間があまりにも大切で、そして忘れられなくて、君はここにいたんでしょ?』 どんな時間を過ごしたのかはわからないし、それは僕らが知らなくていいことだから何も言わないけれど。 ただ、そう思っているのは、きっと君だけじゃない。 それだけは、確信できた。
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