scene.8

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「どういうことだって言いたげな顔だけど」 「あぁ、そうだな」 頭もいいし、勘も悪くないのに、自分のことは別なのか。 「うかうかしてると、鳶に油揚げをさらわれちゃうよ?」 「…」 「というか、それを警戒して、僕達に名前さえ教えなかったんでしょ?」 たぶん、篠宮は僕達を認めてくれている。だからこその牽制だ。 それは大いに光栄だけれど、警戒するのが僕達だけで事足りるはずがない。 篠宮が心配するような「恋愛対象」ではないにしても、彼女は僕達が気に入ってしまうほどには、魅力的だ。 「無駄な抵抗だったがな」 「…篠宮、面白すぎなんだけど」 結局、僕達が彼女の名前を知り、その名を呼ぶことが気に入らないらしい。 蘇芳祭のワンポイントテニスレッスンで、彼女の名前を知ったと思っているようだけれど、実はそうではない。あの催しでは、参加者名簿などは特に作成していない。 レッスン時に簡単な自己紹介はしたけれど、僕は彼女を担当していないし、担当した祐は名前さえ確認していない。僕達がそれを知ったのは、彼女の友人からだ。 「僕達が名前を知ったのは、友達がそう呼ぶのを聞いたからだよ」 「…」 篠宮が僅かに目を見開く。
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