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「だから、苗字がわかんないんだよね。で、“舞さん” って呼ばせてもらってる」
「…」
「僕達は気軽に “舞さん” って呼んじゃってるけど、祐なんかは名前を知っても “あんた” って呼んでた。篠宮に義理立てしてるのかな、意外と可愛いとこあるよね」
そう言って笑うと、篠宮は益々不機嫌な顔をして、「うるさい」と低い声で呟いた。
「篠宮が嫌ならちゃんと苗字で呼ぶけど? なんていうの?」
「今更だろうが」
苦虫を噛み潰したような表情になってしまった篠宮を見て、そろそろ悪ふざけは止めた方がいいかと思案する。
彼女が絡むと、こうも崩れてしまうのか。
篠宮の弱点としては、これ以上のものはないかもしれない。
「この期に及んで、まだフルネームを教えたくないほど大事なら、そろそろ動いた方がいいんじゃない?」
「…お前にしては、お節介なんじゃないか? 藤代」
お? 今日初めての反撃か。
でも、言われてみればそうかもしれない。僕にしては、お節介がすぎるかも。
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