scene.8

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「だから、苗字がわかんないんだよね。で、“舞さん” って呼ばせてもらってる」 「…」 「僕達は気軽に “舞さん” って呼んじゃってるけど、祐なんかは名前を知っても “あんた” って呼んでた。篠宮に義理立てしてるのかな、意外と可愛いとこあるよね」 そう言って笑うと、篠宮は益々不機嫌な顔をして、「うるさい」と低い声で呟いた。 「篠宮が嫌ならちゃんと苗字で呼ぶけど? なんていうの?」 「今更だろうが」 苦虫を噛み潰したような表情になってしまった篠宮を見て、そろそろ悪ふざけは止めた方がいいかと思案する。 彼女が絡むと、こうも崩れてしまうのか。 篠宮の弱点としては、これ以上のものはないかもしれない。 「この期に及んで、まだフルネームを教えたくないほど大事なら、そろそろ動いた方がいいんじゃない?」 「…お前にしては、お節介なんじゃないか? 藤代」 お? 今日初めての反撃か。 でも、言われてみればそうかもしれない。僕にしては、お節介がすぎるかも。
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