scene.8

「そうだね。黙って見守るのも一興だけど、僕としては、やっぱり篠宮も大事だからね」
「…？」

訳のわからないといった表情の篠宮を見て、溜息をつく。
…本気で、僕達以外に敵はいないとでも思っている？

「何も言わなくても、いつまでも自分の傍にいてくれるなんて、思わない方がいいよ」
「…藤代」
「もうすぐクリスマスだし、お正月もあるし、まさか何のアクションも起こさないとかないよね？」
「…」

黙りこくる篠宮を見て、今度は奴にもわかるくらい大きな溜息をついた。

「神崎女学院大学とか、どんだけ男が群がるかわかってる？　あっという間にどこの誰かもわかんないようなヤツに持ってかれるよ？」
「あいつは…」
「あいつは？」

意識しているのか、無意識かはわからないが、彼女の自分に対する好意を自覚しているからこそ出てくる言葉。
しかしそんなものは。

「何があっても揺らがないって保証、あるの？」
「…」
「篠宮が何のアクションも起こさないのに？　その間に誰かが彼女にアクションを起こしたとしても、そう思える？」
「…」