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今の彼女と篠宮は、もしかすると一番心地いい状態なのかもしれない。
でも、ほんの少しでもバランスが崩れれば、一気に違う方向へ傾いてしまうという危うい状態でもある。
そして、自分とは違う方へ傾いてしまえば、篠宮の後悔は計り知れないものになるのは明白だった。
「何か、知っているのか?」
篠宮の問いに、薄く笑う。
余裕のない表情とはいえ、頭は冷静に働いているらしい。
まぁ、ここまで言えばそういった結論に辿り着くだろうけれど。
「…まぁね。それは教えないけどね」
「…」
「ここまで忠告するってことは、どういったことか想像つくと思うし」
「…嫌な奴だな」
「あれ? それこそ今更でしょ?」
僕が一筋縄ではいかないってことくらい、篠宮は嫌というほどわかっているはずだ。
何せ、中学からの付き合いなのだから。
「…わかった」
不承不承頷いた篠宮を見て、僕も満足げに頷く。
初めて篠宮をやり込めた気がして、どうしても笑みが浮かんでしまう。
こいつには、いつもなんだかんだとはぐらかされてばかりだったから。
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