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仁は『俺もだよ。』と言ってまた、笑った。
その後、私達は、山の風景を堪能して街まで帰り、夜の帳が降りる頃には、行き付けの居酒屋にいた。
いつものように、他愛のない話をし、いつものように、その店のお薦めに舌づつみをうち、ほろ酔い加減の二人は、ご機嫌だった。
そろそろ、家の店に、仕事に出るつもりで、帰ると言うと、仁は私を家の駐車場まで送って来てくれた。
その駐車場の横に階段があった。
店に顔出すつもりではあるが、酔いざましに二人は、今しばらく、その階段に座って話し合っていた。
どれぐらい、話していたんだろう。
もう少しだけ、もう少しだけと思ううちに、夜空には星が瞬き、やがて、夜から、朝へと移り変わる空の色の最も、美しい時間帯がやってきた。
私『もう少しで朝だね。』
仁『由起ちゃん、一緒に暮らそう。』
突然、本当に、唐突に、空を見ていた私の右頬にキスして仁が言った。
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