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勢い良く立ち上がる俺に、孝は目を丸くした。
「!いきなり何」
「出掛けてくる!」
「出掛けるって…この悪天候で?」
「おう!それから孝…本当にありがとな。ぅおおお大好きだー!」
「…ば?!おま…っ」
孝が居なければ俺は自身の気持ちに気付く事も、こうして行動を起こす事も出来なかった。
自分で答えを見つけるつもりだったのに、結局お前に背中を押されてしまった。
勇気をくれた感謝を込めて思いっきり抱き付けば、孝の顔が林檎みたいに赤くなる。
「それじゃあ、行ってきまーす!」
もしも孝の気持ちを透也さんと出会う前に知っていたのなら…きっと全てが違っていたかもしれない。
今の俺にその『もしも』を口にする事は出来ないけど、孝には感謝してもしきれないし、これからもきっと頭が上がらない。
そして家を飛び出せば外は土砂降りで、雨の勢いは収まる所か激しさを増すばかり。
だけど自覚した今、俺はこの気持ちを直ぐにでも透也さんに伝えるべきだと思った。
明日なんて待ってられない。
今なら、あの人がくれた言葉の本当の意味が理解出来る。
『無理に付き合わせて…悪かったな』
あの選択をさせたのは他でもない…俺だから。
もう手遅れかもしれない。
今更だって突き放されるかもしれない。
どんな結果になっても構わなかった。
それでも俺はこの想いと共に…激しい豪雨の中、透也さんの元へ真っ直ぐに駆け出した。
04ーendー
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