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透也さんの驚きに満ちた赤い瞳が、俺を見据えた。
「……圭」
「っ…すみません、いきなり……押しかけて…」
部活で向かい合う事はあっても、こうして会話するのはあの日以来。
そのせいか…名前を呼ばれるだけで鼓動が速まってしまう。
緊張を誤魔化す為に何とか呼吸を整えながら笑えば、透也さんは考えるように視線を外し…途中まで開いた扉を全て開けた。
「…とりあえず、入れ」
「はい、ありがとう御座いま…!」
追い返されない事にホッとした瞬間、透也さんが控え目に俺の首筋に触れた。
その手は直ぐに離れたけど、突然の事に心臓が跳ねる。
「…やはりな」
「へ?」
「冷え切ってる」
「え…あ」
さっきまで無我夢中で走って体が熱かったからか、自分がこんなに濡れてるとは思わなかった。
気付いたらちょっと寒い気もする…けど。
「風呂を貸すから入ってこい」
「いや、これくらい全っ然問題ないですよ!」
「震えてるクセに強がるな」
「…!」
「風邪を引かせたら休みの意味がないだろ」
強めの口調で言われてしまい、俺は反論出来ず狼狽えてしまった。
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