第五話「好きです」

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    以前に一度だけ部活の後に先輩達と遊びに来たことがあったから、何となく部屋の場所は覚えている。 短い廊下を歩いて音がするリビングに顔を出せば、透也さんが黒いソファーに腰掛けてテレビを見ていた。 そして俺に気付き、肩越しに振り向く。 表情が出会った頃のように堅く感じ、思わず怯みそうになったけど、それを何とか堪えてお礼を伝える。 「あの…ありがとう、御座います。風呂まで貸してもらって」 「…いや、構わない」 そして透也さんは俺をソファーに座るよう促してから立ち上がった。 「何か飲み物を取ってくる」 それだけ告げ、俺の側を横切りその場を離れた。 パタンと閉まる扉に…心が沈む。     多分…気のせいじゃない、よな。     ここに来てから、透也さんは俺とマトモに顔を合わせようとしない。 何となく、予想はしてたけど…やっぱりキツいな。     重い足取りでソファーに腰掛け、膝を抱える。   俺の選択は正しかったんだろうか。 考えれば考える程、悪い方に行ってしまう。   いや、ダメだ。 こういう時こそ…笑わなきゃ。     どんな結果でも構わない筈だ。     でないと俺も…前に進めない。 自然と拳に力が入る。     そして背後で扉が開く音がした。 また緊張が押し寄せてくる。    
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