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どれだけそうしていたかは分からない。
涙もいつの間にか止まり、透也さんから唇を離された時にはすっかり俺の息も上がっていた。
けど心地良い感覚で、以前のような恐怖はなく…もっとしていたいとさえ思ってしまう。
覆い被さったままの透也さんは、微かに笑いながら首筋に顔を埋めてきた。
それに目を丸くしていると、そのまま抱き締められる。
「…先に言わせてしまうなんて、情けないな」
「へ?」
「…ありがとう、俺を好きになってくれて」
「…あはは、いえ」
改めて言われると何だか照れ臭くて恥ずかしいな。
赤くなる顔を誤魔化す為に、笑いながら透也さんを抱き締め返した。
「…圭」
「何ですか?」
透也さんは俺から体を離し、真っ直ぐに視線を交わしてきた。
その真剣な眼差しに心臓が跳ね、息を呑む。
「俺からも、改めて言わせて欲しい」
「……」
「………好きだ。俺と付き合え、異論は認めない」
さっきまでの空気はどこへやら、自信満々の笑みから放たれたまさかの命令口調に、俺は笑いを堪えきれず吹き出した。
「あははは!何なんすかソレっ…」
「返事は?」
「返事いるんですか?」
もう既に答えは決まっているのに。
「お前の口から聞きたい」
向けられる視線の安心感に…つくづく俺はこの人に弱いんだなと実感してしまう。
上手いこと乗せられた気もするけど、まぁいっか。
「勿論、俺はアナタのモノですよ」
そう言って笑えば、何時になく嬉しそうな透也さんは俺の顔中に幾つものキスを降らせてきた。
それは次第に顎、首、鎖骨と移動し、俺のジャージのチャックをゆっくり下ろし上半身を晒される。
恥ずかしくておもわず体を捩ると、透也さんは何故かピタリと止まり…どこか一点を見つめて固まってしまった。
「…圭、最近虫に刺されたか?」
「へ??」
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