番外編・第八話「そしてアナタと。」

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    含んだ笑みを浮かべたまま俺の隣に腰掛け、わざとらしく顔を覗き込んでくる透也さん。 どんな表情でもカッコ良く思えてしまう俺は、色んな意味で手遅れなんだと自覚せずにはいられない。 そしてどうすれば許すか、その問いに対して思い付くのはコレしかなかった。 「…頭、拭いて下さい!」 自信満々にはっきり告げると、透也さんはきょとんと目を丸くした。 「…そんな事で良いのか?」 「はい!俺、透也さんに触ってもらうの大好きなんです」 恥ずかしさを誤魔化す為に笑って言えば、透也さんは何度か瞬きするとそうか…とそれ以上言う事は無く、俺の濡れた髪をタオルで優しく拭いてくれる。 何度も行き来する透也さんの大きな手。 時々指を立てて指圧してくれる感触が堪らなく好きで、俺はうっとりと為されるがままになっていた。   そういえばあの雨の日も、透也さんにこうしてもらったっけ。 何て思い返していると、突然目の前が薄暗くなった。 「ん?透也さ……」 ちゅ…と小さな音を立てて触れる唇。 突然の透也さんのキスに驚いたけど、全然嫌では無かったからそのまま黙って受け入れた。 そして何度か唇を軽く啄まれると、透也さんはゆっくりと顔を離す。 「こうしてると…あの日を思い出すな」 「!」 透也さんも…俺と同じ事考えてたんだ。     偶々かもしれないけど、そういう何気ない思考を全く同じタイミングでしてたと思うと何だか嬉しくて、にやける顔を抑えられない。 そんな俺に、透也さんは疑問符を浮かべた。 「何が可笑しい」 「ふふふ、秘密です」 「ほう…俺に隠すのか」 「隠してませんよ」 「…なら教えてくれ」 好奇心を覗かせる瞳に、自然と顔が綻ぶ。 …悪い事では無いし、言ってしまっても良いかな。     
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