1.精霊使い

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 それはそれとして、ガサガサと草根をかき分けて進んでくる足音が沢山耳に届く。  鳥系の式神だけでなく、陸上動物系まで使役できるとなると、やはり術者自身の能力である可能性大だな。  ちなみに式神ってのは、陰陽道で使用する術みたいなものだ。  魔力を送り込んだ紙に特殊な術式を編み込み、あたかも紙に命が宿ったかのようにみせる魔術。  それは術者の命令を忠実に守る兵士になり、姿も術者の思い通りになる。  精霊魔術として行使する場合もあれば、特殊な訓練を積んだ人間自体が使用することもある。  特に後者の場合は厄介であり、精霊魔術との波状攻撃をしてくる可能性が高いのだ。 「囲まれてるぞセリ」 「解ってるわ。  こんなの雑魚に使うのはもったいないけど、月宮。あんたに私の実力を少しだけ見せてあげるわ」  そう告げると、研ぎ澄まされた魔力がセリの身体から放出される。  それは彼女の左手に収束していき、空間が歪むような高密度の魔力が発生した。  ごくりと自分で生唾を飲み込むのが解る。 「アルカナ準備はいい?」 「いつでも大丈夫だ」 「“大アルカナNo. 01正・魔術師”」  左手に収束させていた魔力がアルカナに注がれていく。  すると彼女の身体がまばゆい光に包まれた。  2、3秒でその輝きは失われていき、妖精のような精霊の服装が変化していた。  魔法使いが着用するような白いローブを纏い、先端に水晶らしき石が付いた杖を手にしていた。
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