【四刺し】

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 午後から予約がある為、夕方以降荷物を持って再び店に来るようにと伝えられていた恵は、言いつけ通り、その日の夕方六時を過ぎた頃に、着替え等が入っているのであろうボストンバッグと何やら紙袋を手に提げて戻って来た。 「伊織先生! 今日からお世話になります。これ、一緒に食べませんか?」  明るい彼女の声を聞きつけ、伊織が玄関まで出迎える。  ニコニコしながら紙袋を掲げるところを見れば、お弁当を買って来たようだ。 「それは有難い。では、お茶を入れるから……あぁ。その前に貴女が寝泊まりする部屋に案内しよう。靴を脱いで着いてきなさい」  気遣いの出来る恵に対し、感謝の意を込め目尻を下げた伊織は命令口調ではあるものの、その口調は優しい。  恵はすぐに靴を脱ぎ、きちんと靴を揃えてから、伊織の後をついて行った。  案内された部屋は二階に上がった一番奥の部屋。  六畳くらいの広さなのだが、何も置いていないのでやけに広く感じさせる。  布団は襖を開ければ入っているし、タオル等も。そこに何枚かはあるからと、伊織は説明した。  その他、トイレ、洗面所、お風呂、洗濯機、台所等を案内してもらい、使い方や注意点等の説明を受け、初めに二人が話をした和室で夕飯を食べる事にした。
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