【五刺し】

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 伊織と恵は、施術部屋(実際に刺青を施術する部屋)に移動した。  恵は伊織のような職人ならば、時代劇や任侠映画で出てくるような、薄暗く、陰気な雰囲気の和室を想像していたのだが、実際には、明るく、衛生的な空間で、歯医者にある診察用の椅子のようなものとベッドがあった。  そして、壁には沢山の資料が並べてある本棚と、様々な道具が鍵のついた棚に保管されており、まるで病院の診察室のようであった。 「……すごい……病院みたい……」  思わず恵がそう言うと、伊織は頷いた。 「人の体に針を刺し、傷をつけた上で、更に色を入れるんだ。衛生面はしっかりとしなくてはいけないし、それ相応の知識も準備も必要だからね」  顔を引き締め、ピリッとした空気が流れる。
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