【五刺し】

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「特に、私の場合は、昔からの技法や素材を重視しているから、今では使わないような鉱物も色を入れる時に使う。沢山刺す刺さないにしろ、発熱の可能性は大きいし、痛みも大きいんだよ」  施術前に、少し怖がらせるかのような発言をしてしまった事に気が付いたものの、正直に話す事が大切だと思い、続けた。 「勿論、痛みを和らげる為、キシロカインを墨に一、二滴入れたり、麻酔クリームを塗ったりもするけど、それでも痛いものは痛い」  そう言いながら、伊織は鍵付戸棚の鍵を開けて一本の縫い針を出し、その尖った針先を自分自身の左の人差し指を刺した。  伊織は小さな痛みに片眉に少し皺をよせた。  針を抜くと赤い血がぷっくりと盛り上がり、そして、滴った。
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