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伊織は小さく頷き、少し離れた所に置いてあったキャスター付の大きな姿見を、恵の横に持って来た。
「まずは全体の輪郭……筋彫りの完成だ」
恵は自分が全裸だという事も忘れ、勢いよく立ち上がった。
そして、そこに映る自分の姿に大きく目を見開いた。
「す……ごい……」
思わず恵は声を上げた。
一見どれも同じに見える筋彫りだが、色が入っていないとはいえ、線の太さ、墨の濃淡も様々。
黒一色の墨しか使っていないはずなのに、これ程までに黒という色の種類があるのか? という技法。
それ故に、鱗一つ一つ、胴体の曲線一つ一つにまで生を思わせた。
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