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気付ば、下草を踏む足音は軽く、確信を持って近づいてくるのがわかったので、どこかの令嬢が自分を見つけたのだろうとシンデレラは少し疎ましく感じた。 いつもの彼ならば、気晴らしにでも美しい令嬢と戯れるのも良いかと思うところなのだが。 とりあえずこの夜会に彼がいないことはわかったので、あとはもう1人でここで自由に物思いに耽っていたかったのだ。 だからその足音がすぐ近くで止まったときに、 「人を待っておりますので」 と、思いがけず強い口調になってしまったのだ。起きあがりもせず、目をあけることすらせずに。 暗闇のなかで、その足音の主が息をのむ気配がする。 しばらくしてシンデレラが目をあけると、側には誰もいなかった。 いつの間にか風もやんだようで、さっきまで濃く漂っていた薔薇の香りが途切れる。
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