42人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「おっ、おっ、ぶっ、ぶっ…」
ぐいぐいと横からのぞき込んできた義母が、それを目にした途端卒倒しそうな顔をして、痙攣するように言葉が出て来ない。
「王様んとこの舞踏会?」
なんで義兄経由じゃなくて、直接自分にこんなものが来たんだろう、と思っていると、ふいに義母がけたたましく叫んだ。
「服!服を作らなくては!明後日までに作らなくちゃ!!!デザイナーを、布地屋を、ああ、宝石商も呼んでちょうだい!」
招待されているのはシンデレラなのに、義母は自分も服を作るつもりらしい。自分のお気に入りのデザイナーの名前を連呼しながら、物凄い勢いで部屋を出ていった。
「明後日までって…お針子何人に徹夜させるおつもりですか」
それを呆れたように見送って、再びカードに視線を落とす。
「シンデレラ様…」
ラム漬けの葡萄を手に吐き出して、涙目の少年がおずおずと声をかけてくる。
「ん?なんだ?」
「どうして王宮から招待状が来たのでしょうか?」
「あー、それはよくわかんないな。これまで王宮の夜会や舞踏会に出てたのだって、義理の兄殿の連れというふれこみでもぐりこんでいたのだからな」
本当になんでだろうなあ、と小間使いも呆れるほどの呑気さで応える。
そしてご主人様はカードをサイドテーブルの上に滑らせ、またベッドに寝転がって本を読み始めた。
王制に反対し、数年前に国外追放になっている著者の本を。
最初のコメントを投稿しよう!