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「おっ、おっ、ぶっ、ぶっ…」 ぐいぐいと横からのぞき込んできた義母が、それを目にした途端卒倒しそうな顔をして、痙攣するように言葉が出て来ない。 「王様んとこの舞踏会?」 なんで義兄経由じゃなくて、直接自分にこんなものが来たんだろう、と思っていると、ふいに義母がけたたましく叫んだ。 「服!服を作らなくては!明後日までに作らなくちゃ!!!デザイナーを、布地屋を、ああ、宝石商も呼んでちょうだい!」 招待されているのはシンデレラなのに、義母は自分も服を作るつもりらしい。自分のお気に入りのデザイナーの名前を連呼しながら、物凄い勢いで部屋を出ていった。 「明後日までって…お針子何人に徹夜させるおつもりですか」 それを呆れたように見送って、再びカードに視線を落とす。 「シンデレラ様…」 ラム漬けの葡萄を手に吐き出して、涙目の少年がおずおずと声をかけてくる。 「ん?なんだ?」 「どうして王宮から招待状が来たのでしょうか?」 「あー、それはよくわかんないな。これまで王宮の夜会や舞踏会に出てたのだって、義理の兄殿の連れというふれこみでもぐりこんでいたのだからな」 本当になんでだろうなあ、と小間使いも呆れるほどの呑気さで応える。 そしてご主人様はカードをサイドテーブルの上に滑らせ、またベッドに寝転がって本を読み始めた。 王制に反対し、数年前に国外追放になっている著者の本を。
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