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「うちのシンデレラは身体が弱くて。嫡男とはいえ、家を継ぐことはかなわぬ身ですのよ」 ですからこうして連夜の夜会で、息子の片づけ先を探しておりますのよ、とまでは御義母上様は言わなかった。 勿論、家を出る前に、その虚弱息子が一時間ほども剣の稽古に汗を流すのに余念がなかった事など、知らぬ存ぜぬである。 要は、シンデレラを家から出す口実があれば良いのだし、聞いているほうもよもや本気にはしていまい。 「ああ見えて、本当に弱い子で。おーっほっほっほっほ」 頭のてっぺんから出ているような甲高い義母の笑い声が、豪奢な広間の高い天井に響く。 彼女をとりまいているのは、若い娘たち。 その目は期待に満ち満ちて、貪欲に輝いている。 シンデレラの姿の良いのは、いまや貴族社会では知らぬ者はいない。 彫りの深い美しい顔立ちに凛とした表情、野暮ったいかつらなどつけず美しくウエーブのかかった黒髪もそのままに、立ち姿も良い。 時折気まぐれに見せる笑みなど目にしてしまえば、娘たちは一目で虜になる。
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