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自分を取り巻く娘たちの顔をひとりひとり見渡し、義母は「さて、どの娘がいいか」と内心で舌なめずりせんばかりだった。
裕福で身分が高く、ひとり娘であることが最低条件だ。
容姿は二の次、三の次。無論シンデレラの好みなんて、知ったこっちゃない。
音楽がワルツに変わったことに気付き、娘たちがいよいよ落ち着かなげになる。
「では、ダンスを…」
義母は狙いを定めた娘のうちの1人に、まず目くばせをする。
その娘はみるみる頬を染めて目を輝かせ、まわりの娘たちの嫉妬と羨望の的になる。
が。
「シンデレラ?シンデレラ?!」
肝心の踊る相手が、とっくにどこかへ消えてしまっていた。
娘たちがきょろきょろとあたりを見回し、ざわめきが広がる。
『あンの…馬鹿息子がっ!』
義母は歯軋りせんばかりに目をつりあげた。
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