01

5/20
前へ
/80ページ
次へ
自分を取り巻く娘たちの顔をひとりひとり見渡し、義母は「さて、どの娘がいいか」と内心で舌なめずりせんばかりだった。 裕福で身分が高く、ひとり娘であることが最低条件だ。 容姿は二の次、三の次。無論シンデレラの好みなんて、知ったこっちゃない。 音楽がワルツに変わったことに気付き、娘たちがいよいよ落ち着かなげになる。 「では、ダンスを…」 義母は狙いを定めた娘のうちの1人に、まず目くばせをする。 その娘はみるみる頬を染めて目を輝かせ、まわりの娘たちの嫉妬と羨望の的になる。 が。 「シンデレラ?シンデレラ?!」 肝心の踊る相手が、とっくにどこかへ消えてしまっていた。 娘たちがきょろきょろとあたりを見回し、ざわめきが広がる。 『あンの…馬鹿息子がっ!』 義母は歯軋りせんばかりに目をつりあげた。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加