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「だいたい王子様はですね…」
侍女の延々と続く可愛いお小言を聞き流しながら、王子は昨夜のことを考えていた。
はじめての、自分の情事を。
慣れているシンデレラに始終リードされっぱなしだったけれど、不思議と弄ばれたような嫌な感じはなかった。
それは多分、シンデレラがずっと優しかったからだろう。
これまで情事というものは、女性との行為だとばかり思っていた。
それをこともあろうに、自分が抱かれる側になろうとは思いもしなかったけれど、それもまた何の疑問もなく受け入れていた。
むしろ、無性にシンデレラを欲しいと思ったくらいだった。
愛した人間に愛されるというのは、我を失うほどに強烈な官能なのだという事も、昨夜はじめて知った。
シンデレラによって、この体に深く刻み込まれた。
指先一本動かすだけで、つま先から背筋をかけのぼるような快感がよみがえる。
また、会いたい。
余韻に浸っている王子の指先に、シンデレラの忘れ物のあの本が触れた。
それを見ながら、今度こそ話をしなくては、と思う反面、あの腕の中の事ばかりを考えている自分がいた。
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