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「これが…?」
飯島くんが声を上げる。
「そうか。こうしてしまわれていたから、君から珠玉の気配があまり感じられなかったんだな」
「渡されたのも、最近で…」
「彼女に、すぐに渡さない様に進言したのは俺だ」
奏多くんが言った。
「生まれつき、胎内にない事が判ったから。中谷さん自身が自分の身を守れる頃まで、渡さないでくれと」
それで母は、高校入学の時に……?
でも、そんな進言、どうやってやったの?奏多くんだって、産まれたばっかだよね?
でも……私は別の事で感動していた。正直、奏多くんがこんなに喋ると人とは思わなかった、綺麗な声だと思った、優しく澄んだ低音の声。
桐の箱に手を伸ばした飯島くんの手の甲を、奏多くんはパシンっと叩いた。
「なにやら、伝承が違った形で伝わっているようです、きちんと整理をしましょう」
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