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授業も普通に受けて、部活も終わらせて、家に帰って、母に挨拶する。
自分の部屋に入って、辺りを一周見回してから、はっと我に返った。
今までぼんやりしながら、『いつもの日常』をこなしていた、そう、飯島くんに何か言われてから……。
タマ……珠玉……確かにそう言っていた、それを探していると……。
私は机の引き出しを開けた。
そこにある、桐で出来た小箱を取り出して、蓋をそっと開けた。
綿に包まれてある、直径3センチ程の、虹色に輝く半透明の球。
何故、すぐに、これの事だと思ったんだろう……。
これは私が高校に上がる時に、母から渡されたものだ。
「あなたが産まれた時に、一緒に産まれたのよ」
後産の時、母の胎内から転がり落ちたのだと言う。
「妊娠中に変な事したとか思われてるのかなーって気にした事もあったけど」
母はうふふ、と笑った。
「とにかく、これはあなたのものよ。時が来たら渡そうって思っていたから、渡しておくわね。入学祝いよ」
そう言って渡されたけど、正直私にもこれが何なのか判らない。
って言うか、私のものだと思ってるのに、入学祝いって、母の考える事は、少しピントがズレてると思う。
でも。
初めて会ったあの男が、初めての筈なのにクラスに馴染んでいる男が、これを知っている……?
私はそっと蓋を閉めて、引き出しの一番奥に、しまい直した。
多分、こうしておくのが、一番いいんだ……。
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