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少し上がったところで、芽唯は足を止めて、振り返った。
オレンジ色になってきた空を見た彼女の瞳が輝く。
笑顔を浮かべた芽唯は、また坂を駆け上がる。
1人、坂の途中に残されたレジ王子は、フリーズしていた。
「か、……可愛すぎる」
彼女が見えなくなったので、彼は坂をゆっくりと下る。
彼の影は、芽唯の学校の方にゆっくりと伸びていく。
「やっぱあの子、今日が初対面だと思ってるよな…。コンビニで何度か会ってるんだけど…。ま、それはいいとして…。服装?センス?仕草?雰囲気?何だろ……、めっちゃ好きだ…」
レジ王子は、夕陽を見ながら、胸を押さえる。
「あの子の夢を、支えれる俺にならなきゃな。よしっ!」
校門の近くまで来た芽唯は、ふとレジ王子を思い出す。
「か、かっこよかったなレジ王子…。また行こう…。ん?そういや、いつも行ってるよな…。あっ!!ヤバいヤバい、アイデアがぁぁーー。忘れちゃうーーっ!」
芽唯は、ワインレッドとスカイブルーの輪っか型の校門を、走り抜ける―――。
――――――…
坂を下ったレジ王子は、コンビニから出て来たおばちゃん店員を見掛けた。
彼は挨拶をしようと、手を上げる。
「あ、お疲れさ…」
その瞬間、レジ王子の顔は真っ青になった。
そのおばちゃんAの前に、全く同じ顔のおばちゃんA´が現れたのだ!
レジ王子は、電柱の後ろに隠れる。
同じ顔の2人のおばちゃんは、静かに頷き合った。
「双子…?!」
レジ王子がそう呟いた瞬間、コンビニから出て来た方のおばちゃんAは、何故か顎を掴んだ。
ビリビリビリ……
おばちゃんAは、おばちゃんの顔の特殊マスクを外した!
その顔は何と、また別のおばちゃんだった!
全く面識のない顔を見て、レジ王子は、「知らんっ!」と声を上げる。
特殊マスクを外した方のおばちゃんAは、向かいのおばちゃんA´に札束を渡した。
「ありがとう…。たぶんこれで、やめる私をやめたことで、セカイの崩壊が防げて、未来は修正され、この私は消えるはず…」
そう言ったおばちゃんAの体は、震え出した!
「やっぱり今日だったか…。よかった。じゃ、じゃぁレジ王子によろしく…」
おばちゃんAは、ブルーのキャップを出して深く被る!
パッ――――――
おばちゃんAは、突然消えた!!
電柱の後ろから、全てを見ていたレジ王子は、目と口を大きく開けて立ち尽くしている。
…え、えらいもん見たぁぁぁ――――――!!!
――完――
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