夢とネジと◆レジ王子◆

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「この景色とその帽子を、最後に見れて本当によかったよ」 おじいさんの声が掠れていた気がして、芽唯はおじいさんの顔を見た。 「かっ、会長ぉぉーーーーーっ!!!」 綺麗な景色の下で、雑音のような声が響いた。 叫んだのは、下から坂を走って来たスーツの男性だった。 「おじいぃぃーーっ!!」 スーツの男性の後方に、おばさんや若い男女達が見えた。 彼らの言葉の意味を理解した芽唯は、おじいさんを見る。 「え…会長?……」 「あんたぁぁーーー!!」 ガッ―― 芽唯は、体の大きなおばさんに、肩を掴まれた。 「金目当てかぁ!!殿をどこに連れて行く気じゃぁー!!殿に何かあったらぁぁー!」 叫び続けるおばさんが恐くて、芽唯は泣きそうになる。 殿なの?!芽唯は心の中で弱いツッコミを入れた。 おじいさんが事情を説明しようと口を開く。しかし、何かに気付き、そのまま口を閉じた。 おばさんの肩に、誰かが後ろから触れる。 「違いますよ!彼女が全部助けてくれたんです!」 「え?あ、そうなの?じゃいいわ。ありがと」 手を放したおばさんは、おじいさんの方に近寄った。 芽唯が、聞き覚えのある声だったと思いながら見ると、そこには、さっきのイケメン店員がいた。 レジ王子ぃぃ―――――――――!!! 芽唯には、本当に彼が青空に浮かぶキラキラの王子に見えた。 「大丈夫?やっぱり病院から抜け出した方だったらしいんだ」 レジ王子は、血管の浮き出た細い腕を伸ばし、芽唯の両手を掴む。 「無事でよかった…」 「え?…」 芽唯が唖然としていると、彼はすぐに手を放した。 「あぁ、ごめんごめん。何か…失礼しました」 芽唯はドキドキが止まらなかったので、震えながら深呼吸をする。 「会長ぉぉーーっ!」 「おじいちゃぁーん!」 「殿ぉぉーーっ!!」 「ケビーーーン!!」 スーツの男性やおばさん達は、おじいさんに抱き着いた。 「い、一体何者なの?」 芽唯の言葉に、首を傾げながら、レジ王子は「さぁ…」と言った。 いや、ケビン?!誰かケビンって言った?!ケビンではないよね?いや殿もおかしいわ! 芽唯はツッコミながら、おじいさんを凝視する。 ブ――ン… 「あ、車が来た」
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